当館の自家泉源が誕生したのは昭和30年前後。それまでは共同泉源を利用していた。当時は今よりも湧出温度が低かったうえに、加温に使用できるボイラーなどはもちろんないため、温泉の温度の調整に非常に苦労した。お客様が温泉に入る時間を見計らっては薪をくべて火を焚くなど、お風呂焚き要員は必須だった。
それでも当時は温泉がまだ珍しかったため、木津館の向いにあった今は無き大衆浴場には、近所のみならず遠方からも人が集まった。その館内には小さな動物園のようなものもあったことも評判を呼んだ要因かもしれない。そこにはもはや井戸端会にも似た光景があふれ、地域の交流の場となっていたようだ。
今でも問い合わせがあるほど、レトロで人気の高かった木津温泉のシンボルはすでに閉館してしまったが、そんな時代も超えてその精神だけは引き継ぎ、今なお愛され続ける木津温泉がある。
当館の源泉は、その名も「木津館温泉」。その温度は約25℃と低め。それを絶えずボイラーで、気持ちよくご入浴いただける温度(夏は40℃、冬は41℃くらい)に調節して溜める。このあたりの地は、何もしなくてもお風呂の底がほんのり温かい程地熱によって温められている。温泉と大地からの熱とで、体の芯から温まっていただきたい。